休日の外出が増えた

ちょっと出てくる が、増えた。

その言葉を聞くたびに、私の中で何かが少しずつ、欠けていった——。

最初は、何も感じなかった。

「ちょっと出てくる」と言って 休日の午前中に出かける夫を 私は普通に見送っていた。

気分転換かな、と思った。 男の人には、ひとりの時間も必要だから。

でも——それが続いた。

先週も、その前の週も。 気づけば、休日のたびに 夫はひとりで出かけるようになっていた。

どこへ行くのか、 詳しくは聞かなかった。

聞いても「ぶらぶらしてくるだけ」と 返ってくることはわかっていたから。


ある土曜日、 夫が出かけた後、 私は子どもと公園へ行った。

砂場で遊ぶ子どもを見ながら、 ふと周りを見渡すと——

家族連れが多かった。

お父さんが子どもを追いかけて、 お母さんが笑っている。

当たり前の光景なのに、 胸がじんとした。

うちは、なんで違うんだろう。

家に帰ると、夫はまだいなかった。 昼過ぎに戻ってきた夫は、 どこか、すっきりした顔をしていた。

充電されたような、 軽くなったような表情。

何がそんなに、楽しいんだろう。

私には言えない何かが、 外にあるのかもしれない。

その考えが頭をよぎった瞬間、 私は自分でもびっくりするくらい、 冷静だった。


ある日、さりげなく聞いた。

「最近よく出かけるね。どこ行ってるの?」

「いや、ちょっとそこらへん。 カフェとか、本屋とか」

「ふーん」と返した。

でも——カフェも本屋も、 帰り道にある場所だ。 わざわざ休日の午前中に出かけるほどの 距離じゃない。

言葉と行動が、 微妙にかみ合わない。

その感覚が、 じわじわと積み重なっていった。


ある週末、夫が出かけた後、 私はひとりでリビングに座っていた。

子どもは昼寝をしていた。 家の中は、静かだった。

テレビもつけずに、 ただ窓の外を見ていた。

曇り空の下、 近所の人が犬を散歩させていた。

私は今、何をしているんだろう。

家事をして、 子育てをして、 夫の帰りを待って。

夫は外で誰かと笑っているかもしれなくて。

その非対称さが、 じわりと胸に広がった。

怒りというより—— 悲しみというより——

置いていかれている、という感覚。

この家の中で、 私だけが取り残されているような。


涙が出たのは、 子どもが昼寝から起きて 「ママ」と呼んだ瞬間だった。

その一言で、 こらえていたものが溢れた。

子どもには見せないように、 キッチンに逃げて、 蛇口をひねった。

水の音に混ざるように、 声を殺して泣いた。


その夜、夫が眠った後、 私はスマホのメモに 気になっていたことを書き出してみた。

休日の外出が増えた。 帰宅後、どこかすっきりしている。 行き先が曖昧。 最近、家での会話が減った。

書き出してみると、 ひとつひとつは小さくても—— 並べると、ひとつの輪郭になった。

私の勘違いじゃないのかもしれない。

そう認めることは、 怖かった。

でも同時に—— ずっとひとりで抱えていたおかしいという感覚を、 初めてちゃんと見てあげられた気がした。

自分の感覚を、 否定しなくていい。

それだけで、 少し呼吸が楽になった。


休日に一人で出かける夫を、 笑顔で見送り続けた時間。

その間、私はずっと 気にしすぎかなと 自分に言い聞かせていた。

でも——胸のざわめきは、 消えなかった。

それは、弱さじゃない。

あなたが、 この家庭を、 この関係を、 大切に思っているからこそ—— 感じてしまう痛みだから。

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